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Vol.14 スタニスラフスキー・システム

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ちょい役の「通行人A」に、どうやって深みを与えるのか。演劇の世界で有名な、ある方法を紹介してくれています。ちょっと、かっこいい。

 

スタニスラフスキー・システム」という言葉があります。(略)「君はお茶が好き?それともコーヒーが好き?」と聞かれれば、「コーヒーです」と答えるし、「砂糖は入れる?それともブラック?ミルクは?」とさらに細かいところまで突き詰めて考えていく。つまり、役のキャラクターを台本に書かれていない部分まで、より具体的に、リアルに、細部まで細かく作り上げていく(略)たとえワンシーンしか出てこない役でも、、あるいは細部の描写が一切なくても、読者にはなぜかそのキャラクターが生きて伝わるんです(引用元:売れる作家の全技術/大沢在昌/角川書店)

 

小説を読んでいて、物語の深みに差を感じるのは、まさにこの部分だと思っています。

主人公はもとより、ちょっとした脇役にも魅力を感じることがあるとすれば、そのキャラクターの書かれていない部分がどこまで読者に伝わるか、につきるのではないでしょうか。

 

たとえば同じ100文字を使ったとして、1つのことが伝わるだけなのか、3つのことが伝わるのかでは深みがまったく違います。

その男は、喫茶店で主人公と話をしている、のか。それとも、喫茶店で砂糖2個入りのコーヒーを左手で飲みながら主人公と話をしている、のか。この設定の違いは、物語全体の深みに大きく関わってくるんですすね。

なんとなくで書いているキャラクターでは、そのことが伝わる描写が、書けないはずなんです。意識していないから。意識できないから。それじゃあダメなんです。意識しないと。意識しなくても書けないと。

 

だとすると、やっぱり、あらかじめそのキャラクターに深みのある設定を与えてあげるべきなんですよね。そこで使えるのが、「スタニスラフスキー・システム」ということになります。

 

やってみると、これがすごく難しい。二人一組になって、実際にやってみてください。最初は何も決めず、相手のごく簡単な質問に、即答していくんです。年齢は?名前は?趣味は?そうやって質問に答えながら、自分でキャラクターを作っていく。

最初は難しくて答えにつまってしまいますが、30分もやっていると、すぐに答えられるようになります。そして、しだいに楽しくなっていくんです。1時間もたった頃には、キャラクターがだいぶ完成しているはず。

そうやって、わずか3ページにしか登場しないちょい訳の「通行人A」に、ひとりの人間としての人生を与えてあげる。これで、物語がぐっと、厚くなる。

 

ちょい役に多くの設定を与えることは、小説を書くにあたって、必ずやらなければいけないというものではありません。そんなことをしなくても、、小説は書けてしまうし、読めてしまいます。だから、そうしない人もたくさんいるのだと思います。

手間を、惜しまない。大沢さんの言葉には、説得力がありますね。

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